「どうせ自分には無理だ」「また失敗した」——こうした考えは、状況に対して自然と湧き上がる自動思考(automatic thought)と呼ばれます。自動思考は必ずしも現実を正確に捉えているとは限らず、歪んだパターン(認知の歪み)を含むことがあります。認知行動療法(CBT: Cognitive Behavioral Therapy)では、こうした自動思考を記録し、より現実的でバランスのとれた「別の考え(代替思考)」を探すプロセスが、心の負担を和らげる鍵とされています。
Peacefulの「別の考え」機能は、このプロセスをAIがサポートするものです。出来事・感情・自動思考を記録すると、それぞれ異なる志向を持つ7種のAIが多様な視点から代替思考を提案します。
7種のAIと各アプローチ
比較一覧
| AI | アプローチ | 対象の認知の歪み |
|---|---|---|
| ブルー | グラデーションで捉え直す | 白黒思考・過度な一般化 |
| オレンジ | 明るい未来を描く | 思考の固着・自己効力感の低下 |
| グリーン | 「べき思考」の前提をほぐす | べき思考 |
| イエロー | 強みと価値に焦点を当てる | ネガティブ思考の固着 |
| パープル | 固定観念を相対化する | 思考の前提・固定観念 |
| シルバー | 思考パターンを学ぶ(パーソナライズ) | 個人の繰り返しパターン |
| スパルタン | 今できることに集中する | 外部帰属・感情への固着 |
各AIは、ターゲットとする認知の歪みやアプローチの角度が異なります。同じ記録でも、AIごとに切り口が変わるため、自分にしっくりくる視点を選ぶことができます。以下の例はすべて、同じ記録に対する各AIの提案イメージです。
記録例 「プレゼンで言葉に詰まってしまった。もう誰にも信頼してもらえない気がする」
ブルー — グラデーションで捉え直す
「全か無か」で判断する白黒思考や、一度の出来事から「いつも〜だ」と結論づける過度な一般化に対し、新たな情報や仮説を加えて段階的な見方を提案します。
「言葉に詰まったことと、信頼を失うことは直接つながらないかもしれない」
オレンジ — 明るい未来を描く
「もし〜したら」という想像力で、行動によって変わりうる明るい未来のシナリオを描き、自己効力感(「自分にもできる」という感覚)を回復させます。
「次の機会に一つ準備を加えてみたら、今回とは違う場面が生まれるかもしれない」
グリーン — 「べき思考」の前提をほぐす
「〜すべき」「〜でなければならない」という無意識のルール(べき思考)に気づかせ、その前提を手放した先に広がる可能性を提案します。
「完璧に話せなければ信頼されないと、自分自身で決めているのかもしれない」
イエロー — 強みと価値に焦点を当てる
ネガティブな思考の中にも、自分の強みや価値を見出し、シンプルで明快なポジティブな視点を届けます。
「人前で話すことに挑戦し続けている。失敗しても諦めない姿勢は、確かな強みだ」
パープル — 固定観念を相対化する
思考の根底にある固定観念や前提を言語化し、「そもそもその前提は正しいか?」と問い直すことで、おおらかな視点を提案します。
「そもそも、一度の言葉のつまずきで信頼全体が変わるという前提は、見直せるかもしれない」
シルバー — あなたの思考パターンを学ぶAI
シルバーは他の6種と根本的に異なる仕組みを持っています。過去の記録をもとに、その利用者に特有の思考の傾向やパターンを把握した上で、パーソナライズされた代替思考を提案します。
「過去の記録から、理想に届かない自分を責める傾向が見られます。まず『伝えようとした』こと自体を認めることを心がけると、楽になるかもしれません」
記録を続けるほど傾向が精緻になり、提案の精度が上がります。シルバーの効果を実感するには、日々の記録の積み重ねが重要です。
スパルタン — 今できることに集中する
感情に流されず「今自分には何ができるか」に焦点を当て、行動に移せる具体的な視点を提案します。外部環境や他者への働きかけではなく、自分のコントロールできる選択肢を整理します。
「言葉に詰まった部分を一つ改善する準備を始めれば良い。行動に移すことで、本来求めていた自信が近づいてくるかもしれない」
どのAIを選ぶか
気分や状況に応じて、試してみるAIの目安です。
| こんなとき | おすすめのAI |
|---|---|
| 「全部ダメだ」「絶対〜だ」と感じるとき | ブルー |
| 未来が暗く感じる・諦めそうなとき | オレンジ |
| 「〜しなければならない」が頭の中で多いとき | グリーン |
| 良い点がまったく見えなくなっているとき | イエロー |
| 思い込みが強くなっていると感じるとき | パープル |
| 同じ悩みを何度も繰り返していると感じるとき | シルバー(記録の蓄積が必要) |
| 気持ちより行動に集中したいとき | スパルタン |
どのAIを選べば正解、ということはありません。同じ記録に対して複数のAIを試し、そのときの自分に響く視点を選ぶことが、この機能の使い方です。
使い方
天気マークを選択した上で「書き出す」をタップし、「出来事」と「気持ちと考え」を入力して「感情」とその強さを選択すると、7種のAIから「別の考え」を提案してもらうことができます。
AIアイコンを左右にスワイプすることで別のAIに切り替えられます。「+」ボタンをタップすると選択中のAIから「別の考え」が出力されます。気に入った提案はカードの「入力」ボタンで記録できます。各AIの性格・志向の詳細は、AI選択画面の説明文から確認できます。
無料プランでの利用
有料プランでは全7種のAIをいつでも利用できます。無料プランでも、3日連続で記録すると翌日から2日間、全AIが開放されます。継続して記録することが、機能の解放につながります。
用語解説
自動思考とは、ある出来事に対して意識せずに頭に浮かぶ考えや解釈のことです。「また自分のせいだ」「どうせうまくいかない」といった思考が典型例で、気分や行動に直接影響します。
認知の歪みとは、自動思考に含まれる現実の偏った捉え方のパターンです。主な種類には以下があります。
- 白黒思考:物事を「完全な成功」か「完全な失敗」の二択で評価する
- 過度な一般化:一度の出来事から「いつも〜だ」と広く結論づける
- べき思考:「〜すべき」「〜でなければならない」という厳格な内的ルール
- 心のフィルター:ネガティブな面だけに注目し、全体を否定的に評価する
- 外部帰属・感情への固着:感情や外部環境を行動の理由として、自分の選択肢を見失う
代替思考(別の考え)とは、自動思考に対してより現実的でバランスのとれた見方を指します。自動思考を「打ち消す」のではなく、視点を広げることで気持ちを楽にすることが目的です。